クリストファー・プリースト『双生児』

いまさらだけど、すごかった。

『ドリームマシン』とか『魔法』とか『奇術師』を知ってる僕らは「じゃあ今回はなぁに?」といろいろ思い出しながらいろいろ妄想していたと思うんだけど、いやはやまさか、そんなところを攻めてくるとは思わなかった。この人、本気でSFの歴史をひっくり返すつもりなんだね。あと、前掲の作品に『逆転世界』を加えた上でプリーストがずーっとやってきた「あっちの話とこっちの話」については、いままで以上のスマッシュヒット。「いや、あんた、時々しか出てこないけど、ところでなにしてるの?」と思ってたら最後で見事に炸裂した。「単純に平行しないし両立しないし寄り添うし互いに突っぱねるし、だけど楔打たれてカッチリ結びついちゃってるあちらとこちら」がこういう形で表現されちゃあ、もうお手上げッスわ。こんなに見事に書かれた小説に対してどこを語ればいいのさ。どこがどうすごいか伝えようとしたらこの本の分量の127倍は語る必要があると思うし、だったら最初から「読めよ、すげぇから」としか言えないよぅ。

そんなこんなで、コレ読むのに3ヶ月かかってました。『正義のミカタ』以来まともに本の話をしていなかったのはひとえにこのせいです(途中、余計なものが混じっているけど)。何回も何回もふりだしに戻ったせいで、本がくたびれてしまいましたわよ。そういうことを想定した上で、早川の中の人は何回読んでもヨレない本を作ってくれたらいいのにっ!