スワン・ソング

いまさら、とか言わないでねっ!

昨日、時間を潰すためにブックオフに立ち寄ってマキャモン『ブルー・ワールド』を購入したのです。結局時間が余らなかったので最初の1編しか読めなかったのですが、これがむちゃくちゃ面白くてビックリしました。なんということはない、一家3人がアメリカ南部のド田舎でスズメバチに襲われるだけのお話なんですが、これがめっさ怖いのよ。男の子がトイレに入って用を足していたら天井にスズメバチの巣があって、だけどまだ用が済んでないし、そうこうしてるうちに頭の上にスズメバチが来て、肩にとまって、シャツの中に入って、鼻の頭の上を動き回って。そういう等身大の恐怖から超自然的な恐怖へと切り替わるところがすげぇ怖い。ネタ依存じゃなくて、ネチネチと描写を積み重ねることで演出する面白さです。先日テキサス・チェーンソーを見たときもそうだけど、アメリカ南部って(以下略)。

つわけでとても幸せなマキャモンとのファーストコンタクトだったわけです。んで、ちょいと検索してみたらこの『スワン・ソング』を最高傑作として推す人がいて、なら読まなきゃならんのぅ、と。

ブラム・ストーカー賞最優秀長篇小説賞、日本冒険小説協会大賞受賞という華々しい受賞暦。第三次世界大戦勃発。核ミサイルによる炎の柱と放射能の嵐が全土を覆い尽くした。生き延びた人々を待っていたのは、放射能障害、「核の冬」の極寒、そして過去の遺物の争奪…死よりなお凄惨な狂気の世界であった。核戦争後のアメリカ大陸を舞台に繰り広げられる世界再生の鍵を握る少女スワンを巡る聖と邪の闘いって、ちょいとベタな感じがしないでもないけど、でも「スズメバチが怖い」ってだけでアレだけの短編を書ける作家ですから、ちっとも心配にはなりません。そこに文句言うなら佐藤哲也『熱帯』だって「日本の夏は暑い」って話だからな。

しかし福武か。売ってるのかね。あたしゃ『ツァディク』と『エンジン・サマー』でしかお世話になったことないよ。

追記:

マキャモンではないスワン・ソングがあるらしい。そういえば山田正紀も『スワン何某』だか『何某スワン』だか書いてたな。あれはどんな話だったかな。