多重心世界 シンフォニックハーツ 上.独声者の少年(2006.08.31)

これ。たまにはライトノベルもいいじゃない。

驚愕のスペースパンクという煽り文句に一瞬たじろいで、住人のすべてが多重人格である惑星に身を乗り出し、人格数の多さがすべてに優先する理不尽な社会にトキメキ。そして偽りの価値観、崩壊する世界―今こそ立ち上がれソロ!!に身悶えするのです。立ち上がれって……。もう21世紀だよ?

RSSを整備していてタイトルに惹かれ、いつも見ているサイトで紹介されていて惹かれ、うむ、これはもしかしてもしかするかも。自ら進んでライトノベルを買うなんて『奇蹟の表現』以来かも。ま、あのときは(以下略)

読みました。……ぬぅ。

ライトノベル的なお約束や無難な整合性を確保しようとするせいでダイナミックな展開を引き起こせない優柔不断さが、この作品の面白み(=人格の数によって格付けされた社会)を70%ほど削ぎ落としていると思います。読みながら「違う。そうじゃないんだよぉ〜」と何度嘆いたことか。このままの勢いで下巻に突入すれば、多少気の利いた無難なライトノベルに落ち着いてしまうことでしょうし、そして、おそらく、そうなるでしょう。とりあえず、ここまで付き合ったんだから下巻も読んで、さらにその次の作品を読んだ時点で最終的な判断をすることとしましょう。

イヤらしい話をすると、このまま<ちょっと気の利いた無難なラノベ>で終わった場合、恐らくこの永森悠哉という人は数多のxx(自主規制)作家の群れのなかで埋没してしまうと思います。物書きとしてなにか成し遂げたいと思うのなら、ラノベ的スタイルなんかいったん忘れて、むちゃくちゃやってみたほうがいいと思いました。時には、敢えて説明しない勇気も必要ですよ? はい、イヤらしい話、終了。

わたくし、これでも期待しているんですよ? ラノベに期待したことなんか、古橋秀之以来久しぶりのことです。