本多孝好『チェーン・ポイズン』

これまた感情移入とは無縁の薄気味悪い話で。悪意も冷酷さもなしに、ただ単純に死ぬことに対するハードルを下げられるだけ、というシチュエーションが薄気味悪い。そのシチュエーションの中にあって、ごく普通に血の通っている考え方と行動をし、でもそれらは常に死が前提になっている人間というのも薄気味悪い。そんな薄気味悪さを児童養護施設と一緒に語る物語も、それを飄々と表現するいつも通りのサラサラした文体もまた薄気味悪い。とにかく心をジクジクさせられるイヤな話で、そりゃ僕は本多孝好に毎回この手のジクジクした話を求めているわけだけど、毎回こうやって新鮮なジクジクを提供されるというのも、それまたイヤな話だね。

なぜか主人公が白血病で死んだり、「死亡フラグ」なんていうよくわからないパラメータが跳梁跋扈する十把一絡げの小説モドキをありがたがる人々は本多孝好に謝ればいいと思う。