フランク・ダラボン『ミスト』

嵐の次の日、街は霧で包まれて怪物が跳梁闊歩。スーパーマーケットでの足止めを余儀なくされた主人公はその他の客とともに状況の打開を試みる。

という話ではないです。

スーパーマーケットにいる多くの客は、それぞれ皆いろんな考えを持っている。怪物の存在を信じない人、神の御業と説く人、とりあえず切れる人。外の状況はどうであれ、やっぱり一番怖いのは人間だわな。

という話でもなかったりする。

とにかく、主人公も含め登場人物の全員の行動がいちいち馬鹿っぽくて腹立たしい。「早くあーすればいいのに、何をこいつらはちんたらやってんだ」とか「早く逃げればいいのに、何をこいつらはちんたらやってんだ」とか、とにかく10分に1回はイラッとさせられ続けました。ストーリーの進行が止まると面白くなるのに、動き出したとたん腹立つシチュエーションばっかり。「あーもう、頭の悪い映画だなぁ」と思ってました。

まったくその通りの映画だったんでした。

最後まで観て納得。これは、皮肉でもなんでもなく、とにかく人をイヤな気分にさせることに全精力を注いだ映画だったんだね。そうすると主人公の無駄な正義感とかイライラする鈍くささとか、周りの人間のイヤでイヤでイヤな思想とか、「間に合わない」だの「死亡フラグ、立ってなかったじゃんっ!」だの、そういうのが実は「イヤな感じ」を演出するためにデザインされたものだということがわかりました。うわー、最悪。映画中唯一爽快な気分を味わえるのは<女が銃殺されるシーン>ってのも、相当イヤな話だな。

面白いんで、観てみてください。いや、クソ不愉快なので、観てみてください。