thirteen

※映画じゃあないんですけど、管理上。

Masters of Horrorの新シリーズがいつのまにかレンタル開始していたのでした。前回の高打率はほとんど神憑りだったので、なにを躊躇するでもなくすべて借りてきました。寝不足とか、関係ありません。評価は5段階で。

  • 鶴田法男『ドリーム・クルーズ』
    • 評価:1
    • 原作は鈴木光司夢の島クルーズ』。未読。日本のホラーは嫌いではないですが、鶴田法男の間の取り方は苦手です。いかにも怪談めいたのっそりした演出が、僕には間延びして見えます。本作も「いかにもJホラー(笑)」な感じで、つまり「緑色」なわけです。いったいなにが日本のホラーを「緑色」にしたんでしょうかね。ウルトラQとか怪奇大作戦とかをまともに見たら解決するんでしょうかね。
    • 前回の日本枠は三池崇史『インプリント』。原作は『ぼっけえきょうてえ』。いかにも三池崇史な感じで、僕は嫌い。
  • ジョー・ダンテ『男が女を殺すとき』
    • 評価:3
    • 原作はジェイムズ・ティプトリーJr『ラセンウジバエ解決法』。無論既読だが、忘れてました。ベタッとしたフェミっぽさと安っぽさと「セカイ系」なみに全体像を見せない感じがちょっとした退屈を覚えさせる。遭遇シーンは、可愛かった(あぁ、逆関節っ!)。できれば原作をもう一度読んでお口直ししたい。
    • 前回は『ゾンビの帰郷』。イラク戦争だか湾岸戦争だかで戦死した兵士がゾンビになっていろいろ暴れる話。まぁ、そのとおりの社会批判ネタなわけですが、ケラケラ笑いながら観ることができました。故に今回のこの失速は残念ナリ。
  • スチュアート・ゴードン『黒猫』
    • 評価:2
    • 原作はアレ。確か未読(有名すぎる作品ってのは往々にして読んだかどうか覚えてないものです)。音楽は素晴らしい。
    • 前回は『魔女が棲む家』。『ダゴン』を観に行ったHPLフリークな友人は「神に対する冒涜だ」と言っていた。
  • トム・ホランド『アイスクリーム殺人事件』
    • 評価:1
    • 子供に殺されたアイスクリーム屋が、十数年後に復讐するために街に帰ってくる話。殺そうとする相手を模ったアイスを子供に食わせると、対象者はアイスになって溶けてしまうのだっ! 下らなすぎてつきあいきれん。
    • トム・ホランドって人のことはよく知らなかったけど、『チャイルドプレイ』の人だったんですね。アレもサイテーな映画でしたので、まぁそんなものかなぁと。
  • ジョン・カーペンター『グッバイベイビー』
    • 評価:3
    • 「悪魔の子」を宿した女性が堕胎専門病院に駆け込む。父親のロン・パールマンは神の声に従って息子と一緒に病院を襲撃する。もう、どう評価していいものだか本当に困る作品。これ、笑いながら観るべきなのかなぁ。
    • 前回は『世界の終り』。『世界の終り』という幻のフィルムを追いかけてアッチ側に足を踏み入れてしまう映画館オーナのお話。いろんな意味で激ヤバで、僕が今までに観たホラーの中でもかなり上位に位置する名作。『フリッカー あるいは映画の魔』が幸せな形で映像化されたものだと思ってみてください。それ、すごいでしょ?
  • ミック・ギャリス『ヴァレリーの誘惑』
    • 評価:3
    • 作家ワナビさんばっかり集まるアパートに引っ越した作家ワナビさんがちょっと特殊な女性の幽霊とちょっと特殊な怪物に出会う話。ありきたりのネタを一番やっちゃいけない調理法でやらかした感じ。お話としてはしっかり作られているので退屈はしないけど、でも、そりゃないよ。
    • 前回は『チョコレート』。チョコの匂いを嗅ぐとある特定の女性の身体感覚を受信してしまうというすげーぶっ飛んだ話。その設定だけでも十分お腹いっぱい。
  • ジョン・ランディス『言葉なき隣人』
    • 評価:4
    • 陽気なフォークソングにのって(****自主規制****)ご家族を増やす男の話。とにかく頭のおかしい話な上に音楽のセンスが抜群。娘を寝かしつけるシーン、「もう家族を増やすのはやめて」と抗議する妻と口論するシーン、終始穏やかな笑顔の祖母とか孫をベタ可愛がる祖父。どいつもこいつも頭がおかしい。撮り方が秀逸であるゆえの、優秀な作品。
    • 前回は『ディア・ウーマン』。その通りのお話です。Dearではないけど。
  • ピーター・メダック『ワシントン・コード』
    • 評価:5
    • 祖母が死んだので葬儀に出席するために祖母の住んでいた地域に行ったら、世界史を塗り替えてしまうくらい衝撃的なジョージ・ワシントンの手紙を発見して、ワシントニアンと呼ばれる狂信者に追いかけ回される話。つまり、超おバカ陰謀ネタ。これ撮った監督、アメリカでフルボッコされてないか心配でなりません。ワシントニアンの生態系の馬鹿馬鹿しさが衝撃的。ワシントニアンのイコンとなっている絵も馬鹿馬鹿しすぎて衝撃的。全部通して頭に悪そうなお話で、僕のストライクゾーンのど真ん中に入ってきました。短編で撮るホラー映画として、実に効果的な作り。オチは大爆笑。
    • グーグル先生に尋ねたら『スピーシーズ2』の監督であることが判明。ギーガーであることしか特徴がなかった1作目に対して「宇宙人同士の触手エロ」という斬新すぎるネタを投下したすごい監督であるということか。素晴らしいじゃあないですか。
  • アーネスト・ディッカーソン『Vの伝染』
    • 評価:1
    • 伝染するVの話。21世紀なのにね。
    • この監督について調べる気も起きなかったけど、そんなモチベーションの時ですらQuicksilverは優秀なツールなのでした。『BONES』という、いまよくテレビでCMしてるアレの監督らしいです。あぁ、あれもグズグズな話だった。『デーモン・ナイト』という映画を撮っているらしいですが、僕らの期待するデーモン・ナイトではないことは非を見るより明らかだわな。
  • ブラッド・アンダーソン『ノイズ』
    • 評価:5
    • 異常に鋭敏な聴覚に悩まされる男の話。ネタはありきたりでも調理法次第で良くも悪くもできるという好例。異常な聴覚の描写を、単純な音の有無だけじゃなくて、会話中の台詞の被らせ方やカットやそのときの生活音で生かし、さらに周囲の人間との相関も織り交ぜて生かすそのセンスの良さが素晴らしい。ラストも、おそらく誰もが想定するオチだけど、しかしそのときの役者の演技が素晴らしい。これ以上ないほど幸せな表情とその目の前に広がる光景に鳥肌が立った。今回の13作品のなかで一番の出来。
    • マシニスト』は『SAW』の横にあったので「またか」と思い、未見。借りてきます。
  • トビー・フーパー『災厄の街』
    • 評価:5
    • 残念ながらクイーンではないです。海からの風に乗って「あるもの」が街にやってきて、住人が異常な自殺や異常な殺人や異常な事故に遭遇する話。実に普通なホラー、と思ってました。衝撃はラスト1分でやってきました。それまでの「普通なホラー」は、これをやるための壮大な前振りだったわけですな。恐れ入りました。
    • 前回は『ダンス・オブ・ザ・デッド』。ゾンビ薬でとりあえず動けるようになった死体を電気ショックで踊らせる話。無論、盆踊りではない。
  • ロブ・シュミット『妻の死の価値』
    • 評価:3
    • 交通事故で全身に重度の火傷を負った妻を、夫は安楽死させようとするが、自動車メーカからの超高額な見舞金目当てで絡んでくる姑とか弁護士とか元愛人とかそこに群がるマスコミとか、とかく世間は騒がしい、という話。まぁ、それだけじゃあホラーじゃないんで、あれやこれやも出てきます。普通過ぎる出来。
    • ロブ・シュミットは『クライモリ』の人でしょ? あれもごく普通のショッキングサスペンスだったんだよねー。なにか勘違いしている人みたいなので、もうホラーは撮らない方がいいんじゃないかな?

そんなわけで総合評価。

前回ほど神憑りな打率ではなかったけど、一発の当たりの大きさはやはり期待通り。とはいえ、話題作りのために話題の監督を起用するのはわかるが、できればシリーズとしての品質を確保するためにも、あと<Masters of Horror>という看板に嘘偽りがないことを示すためにも、ちゃんとしたものを撮れる人に参加してもらいたいッスね。別に「怖いグロいえげつない」だけを期待して観ているわけじゃあないんですよ?

んじゃ、GyaOポリスアカデミー観ますんで、この辺で。