鎧櫃の血

これ

大変お恥ずかしい話でございますが岡本綺堂は未読です。国書刊行会の叢書<日本幻想文学集成>に収められている『猿の眼』を持っていたはずなのですが。あれ、もしかして正月の大粛清のときに、間違えて売っちゃった? マジで? それ、困る。

ゆったりした口調に練り上げ、成熟した境地を示している。単彩の話題をとらえて、人生の断面を衝き、時代相と生活が渾然と融け合っているという部分にトキメキ。20歳過ぎると並みのサプライズなんか刺身のツマにもなりゃしません(やるなら椅子から転げ落ちるくらいにビックリさせてくれぃ)。ジッと腰を据えて本に取り組むようになりましたから、むしろ平気で1ヶ月以上の長きにわたって付き合える小説のほうがありがたく感じます。無論、読みたい本は続々刊行されるし物欲は増すばかりで、1ヶ月間ずっとツラを向き合わせることなどなかなかに難しいです。とすれば、短期間でどれだけ「濃い」読書となるかが鍵となるわけですが、これは相当難しい。単純に面白い本はたくさんあります。が、なかなか「濃い」読書にはつながらんもんです。

正直な話、岡本綺堂ならば青空文庫でも読めます。が、もしかしたら新著作権法に引っかかって公開停止になるやもしれず、そも作家とのファーストコンタクトはやはり紙媒体であるのが望ましく……。