本多孝好『WILL』

あの薄気味悪さはわりとおとなしめに、欠損を抱えたまま生きている人が盛りだくさんの"MISSING"風味なお話でした。「人の思いは、ときに捩れ、ときに歪み、ときに行き場をなくして戸惑う」という作中の言葉がそのままぴったりで、欠損を埋めるために発せられたはずの死者の意思や生きている人の善意ですらうまく伝わらず、ときに不幸を呼び込んだり、とか。あるいは北村薫加納朋子にもあったまじりっけなしの悪意に対峙させられた人のお話。あるいは、法月綸太郎がさんざっぱら悩んだアレについての、あるひとつの答えでもあったり。

薄気味悪い本多孝好も好きだけど、この心地いい青臭さも、やはり本多孝好の本筋ですな。大変おいしゅうございました。