ピート・トラヴィス『バンテージ・ポイント』

ボーン・コレクター』の映画以来、この手の映画で久々にスゴいものを観たかも。

「合衆国大統領が狙撃されたので犯人を追いかける」というだけのストーリーをわざわざ8つの視点から覗いてみるお話。どこかで「羅生門みたい」という評価を観たので借りてきたけど、それぞれの視点を誰かが統合して「うーん、で、結局どうなんだろうねぇ」ってことにはならず、もっぱら観ている人をビックリさせるためだけに存在しているわけ。つまり単純に叙述にまつわるちょっとしたアヤだったりする。じゃあなんでそんなめんどくさいことしなくちゃいけなかったのかというと、ほんのり凝った大統領サイドとほんのり凝った犯人側とその下に薄くベローンと広がる<偶然>をコントロールしたかったから。いろんなものが玉突き衝突しながらドトーの展開でたどり着くラストは鳥肌もの。「そうきたかー」と声を上げて大笑いしちゃったよ。僕は自称ミステリ屋さんのいう「伏線」ってものを毛嫌いする傾向があるんだけど(中二、ですかね。でもさー、伏線のことをいちいち「伏線」って書いてあげないと自称ミステリ屋さんの使う意味にならないしさー)、今回ばっかりは素直に脱帽。いやいや、素晴らしい。

いちおう言っておくと、「本格」ミステリーではないので「本格しか興味ない」って人にはお勧めしません(てへっ)。