Shift-JISだろうがUTF-8だろうがそれぞれ同一コードなのに2つのビミョーに異なる漢字があるという話。どうやらShift-JISのグダグダ期に原因があったようで、結果、昔々に作成されたフォントセットで表現できるものがいまのフォントセットでは表現できず、逆もまた然りとのこと。戸籍統一文字番号っつーのを使わないといけないのですが、これは自治体同士でデータを交換する際に使用することだけを想定しているようなので、言わずもがなだけどそこいらの一般的なWebサービスにてユーザが自身の氏名漢字を正しくサービス側に提供することに使用するのは実際的にはまず無理。ユーザがサービス提供者に対して戸籍統一文字番号を与えなくちゃいけないからね。つまりこれは第二水準だの第三水準だの第四水準だの外字だのなんだのという問題じゃあないのです。文句があるならMicrosoftとかIBMとかNECとかJISに言ってくだされ。

だから僕は質問者に対して「そんなの無理です。顧客に対してはサポート対象外ですと答えてまったく問題ないです」と答えました。将来的には対応する可能性はあるかもしれませんが、超特殊な事例として個別案件としてカスタマイズの代金をもらってもバチは当たりません。この商品はいろんな人が共同で使うことでみんながコストダウンを図ることを目的としたシステムなわけです。一般性があれば資産性アリと判断されて社内のコストで開発して還元しますが、ことこの商品について言えばこの問題に対する解決は資産性ゼロです。なぜなら、その他大勢の客はそこにこだわらないから。同姓同名同性別同一誕生日同一続柄同一出自の義兄弟を恐れるあまりDB内のIDを客に渡して自己管理してもらうぐらいナンセンスです。

そしたら隣の席に座っている人がなぜか僕に「フォントを変えれば出来るじゃないか」とキレたのでした。

あなた僕の話を聞いてましたか? フォントを変えて入力/表示してあげるということはこの人のこの氏名漢字に対してのみ戸籍統一文字番号あるいはそれに準じた仕組みを提供しなくちゃいけないのです。詳しく言えば、ユーザ入力のための顧客端末、サービス提供のためのWebサイト、DB、PDF出力、プリンタ(証明書印刷用プリンタをナメるなっ!)、およびそれに関わる全てのシステムに対して「この人はこの文字コードだけど古い方のフォントを使わなくちゃいけないからそこだけフォントを変えてあげる」とかいう手を加えなくちゃあいけないのですよ? そう説明したら「そんなの必要ない。うちは間違ったまま保持していたって、客側が正しく表示されていればいいのでしょう?」とのことでした。つまりあれでしょうか。顧客側はカスタマイズしたCSSを保持しておいてうちのサービスで自分の名前を入力するときに限りそれを使用すればOKという話でしょうか。でもそういうことを考えてそうでもないので、たぶん自身の信念に基づく勇気ある発言だったのでしょう。もういっかい最初から説明するのがめんどくさいので質問者に「あとは頭のイイ人が解決してくれるので、僕はタバコ吸ってきてもいいですか?」と席を立ったのでした。

彼はいわゆる理系さんであり、どんな場面においても自分の武勇伝のみを語る人物であり、つまりこういうことを言われたらエレクチオンするような方でございます。彼の口から「へぇ」という言葉を聞いたことはありません。「へぇ」と言わされそうになる局面において彼は必ず話の流れを変えます。すると、その他大勢が話しながら考えていたネタが宙に浮かんだままになっちゃうので、いわゆる「天使が通った」状態になります。彼はどうやらそれを「感心してもらっている」と感じているようです。この不景気で街中を歩いていても皆が俯いて歩いているこのご時世にあっては稀有な才能でございます。彼ぐらいのオプティミストが100人くらい集まればイナバの物置もたまには潰れてみようかなと考えたりするのではないでしょうか。良いことです。

どうしようかな。大滝秀治みたいに「つまらん」って言ってあげればいいのでしょうか。「んなこといいから、まず痩せろ」と言ってあげればいいのでしょうか。